【医師監修】テストステロン減少による悪影響、効果的な増やし方
テストステロンは男性が男性らしくあるための重要なホルモンです。
健康や精神面にも大きく影響していることがわかっており、テストステロンが減少すると心身にさまざまな不調が現れるようになります。
また、テストステロンは加齢によって徐々に減少してしまいますが、日常生活や社会生活の過度なストレスでも減少することもあるので注意しなければなりません。
このページではテストステロンの働きやテストステロンを効果的に増やす方法などについて詳しく解説していきます。
テストステロンの働き
テストステロンが男性にもたらす効果として、
- 筋骨格の成長を促す
- 決断力の向上、好奇心などが旺盛になる
- 性機能の維持・向上(勃起力や精子産生など)
など
こうした肉体を男らしく変化させるホルモンとしてのイメージが強いかもしれませんが、その効果は肉体だけにとどまらず、精神面にも大きな影響があります。
【精神面への影響】
- モチベーションの向上
- チャレンジ精神が旺盛になる
- 決断力の向上
- 認知力の向上
など
テストステロンは精神(思考)や行動に影響を与えるため、男性がバイタリティに満ちた生活を送るためには必須のホルモンと言えるでしょう。
ところがテストステロンの分泌量は年齢とともに緩やかに低下していくことが分かっており、そのピークは20〜30代とされています。
ピークを過ぎるとテストステロンが減少することから身体の衰えを感じるようになり、人によっては不調を訴えることもあります。
テストステロンの減少が男性にどんな悪影響をもたらすのか、次で詳しく見ていきましょう。
テストステロンが減少するとどうなる?
テストステロンが減少してくるとどのような影響が出るのでしょうか。
多くの方は、テストステロンの減少によって「なんとなく不調」と感じるようになってきます。
症状の現れ方には個人差があるものの、そのシグナルとして現れるのが性機能の低下をはじめとした心身の影響です。
その他、肥満や高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まることもわかっています。
日常生活に悪影響を及ぼすケースも珍しくないだけに、まずは自覚しやすい症状について確認していきましょう。
性機能への影響
- 性欲や性的興奮の低下
- 朝勃ち(夜間陰茎勃起現象)の減少
- ED(勃起不全)
テストステロンは性機能も司っているホルモンのため、分泌が減ってしまうと性行動に対して消極的になる傾向があります。
さらに勃起にも密接に関わっているため、朝勃ちの回数の減少、勃起の維持が難しくなることもあります。
身体症状
- 筋力の衰え
- 腹部の脂肪増加(腹囲のあきらかな増加)
- メタボリックシンドローム(内臓肥満、高血糖、高血圧、脂質代謝異常)
- 頻尿
- 疲れがとれない
テストステロンには筋力をつけると同時に、体脂肪を減らす働きがあります。
そのためテストステロンが減ってくればお腹周りに脂肪がつきやすくなり、引き締まった身体を維持するのが難しくなってきます。
"中年太り"や"ビール腹"と見過ごされてしまいがちですが、体型の変化はテストステロン減少の1つの目安と言えます。
また頻尿については一見すると関係のないようにも思えますが、テストステロンの減少によって膀胱の柔軟性が失われていきます。
つまり尿をためておくことができなくなり、その影響からトイレに行く回数が増えてきます。
さらに「休んでも疲れがとれない」「なんだかだるい」といった症状も、テストステロン減少からくる自律神経の乱れによる影響です。
精神症状
- モチベーションの低下
- 急な不安感
- 不眠
- イライラ
- うつ症状
男性は身体症状にくらべ、精神症状が多くみられる傾向にあるのが特徴です。
その症状は多岐に渡り、程度もストレスや環境の変化によっても左右されると考えられています。
テストステロンには、思考や決断力、意欲などを司る大脳に働きかけ、精神活動や行動力を向上させる一面もあります。
そのため、テストステロンレベルが低下すると、感情のコントロールが難しくなり、気持ちが不安定になることがあります。
テストステロンが減少する原因とは?
冒頭でも簡単に触れましたが、テストステロンは加齢やストレスによって減少することが報告されています。
テストステロンの分泌は20〜30代をピークに緩やかに減少します。
そのため、年齢を重ねるにつれて性機能の低下や物事に対する意欲が無くなっていきます。
更年期障害もテストステロンの減少が関係しているため、精神的に不安定になったりします。
また、「過度なストレス」もテストステロンを急激に減少させる原因です。
ストレスによってテストステロンが減少するメカニズムは次のようになっています。
※コルチゾール:副腎から分泌されるホルモン。心身がストレスを受けると急激に分泌される。
過剰なストレスを受けると、そのストレスから身体を守ろうとして抗ストレスホルモンであるコルチゾールが必要以上に分泌されます。
すると、コルチゾールを製造している副腎に負担がかかりすぎてしまい、今度はテストステロンの元となるDHEAが製造できなくなります。
その結果、テストステロンが減っていき、心身にさまざまな不調が現れるようになります。
テストステロン量を調べるには?
テストステロン量は血液検査で調べられます。
血液中のフリーテストステロンの値を調べないといけないため、健康診断で行われる一般的な血液検査では調べられません。
テストステロン量を調べる際は、メンズヘルス外来などが設けられているクリニックや医療機関を受診するようにしてください。
この数値以上であれば正常となり、逆に11.8〜8.5pg / mlの間であれば要注意、それ以下になると治療の対象となります。
ちなみにテストステロンは、朝高く、夕方は低いというように1日の中でも変動(日内変動)します。
そのため採血のタイミングは、数値の高い午前8〜11時までに受けるのが望ましいとされています。
テストステロン増加によるメリット
ここからは、テストステロン増加によるメリットについて説明します。
テストステロンを増加させることで、肉体的な健康を得られるだけでなく、モチベーションにも大きな変化をもたらしてくれます。
男性がいくつになっても若々しくいるためのカギを握っているとも言えるだけに、まずはどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
ダイエット、筋肉増加
テストステロンのわかりやすいメリットとして、筋肉増加があげられます。
その作用は折り紙付きで、ドーピングができてしまうため、スポーツ界では禁止薬物に用いられるほどです。
さらに筋肉量が増えることで基礎代謝UPも見込め、太りにくい体質へと変化するためダイエットにも一役買ってくれます。
テストステロンが低い男性は肥満になりやすいとされているため、健康維持においてもテストステロンを増加させるメリットは大きいと言えるでしょう。
幸せホルモン・性欲増加
テストステロンがつくられると、幸せホルモンとも呼ばれるドーパミンの分泌が促されます。
ドーパミンは脳内ホルモンの1つになり、興奮作用があるため男性が性行為に対して積極的になれるメリットがあります。
- 性欲の増加
- 性的興奮が増す
- 勃起を促す
また、テストステロンは別名"モテホルモン"とも呼ばれ、女性を本能的に惹きつける男性特有のフェロモン効果も期待できます。
決断力・集中力・やる気の向上
テストステロンは元気の源であり、男性のメンタル面にも良い影響を及ぼします。
テストステロンの数値が高い男性は起業家やリーダー気質といった方が多いということが分かっています。
【テストステロン値が高い男性の傾向】
- 大胆
- 決断力がある
- 好奇心が旺盛
- チャレンジ精神がある
- リーダーシップがある
ある種の闘争心を燃え上がらせるような効果があり、こうしたメンタルの強さを引き出すため"社会的ホルモン"と呼ばれることも。
またテストステロンが認知症予防になるという見方もあり、認知症の男性に6ヶ月間テストステロンを与えたところ認知能力が高まったことがわかっています。
テストステロンを効果的に増やす3つの方法
テストステロンを増やすには様々な方法がありますが、ここではテストステロンの効果的な増やし方を紹介します。
【効果的な増やし方】
- 筋トレ
- テストステロン補充療法
- 食事による維持・生成
【その他の増やし方】
- 良質な睡眠
- 日光浴
- 過度なダイエットは控える
筋トレで増やす
筋トレによってテストステロンが増加する理由は2つあります。
- 細胞修復による増加
⇨ 切れた筋繊維を修復するためにテストステロンが分泌される(筋肥大) - 分泌されやすいシチュエーション
⇨ 興奮・緊張・危険といった自らを追い込む環境が、分泌されやすい条件を整える
筋トレはテストステロンが分泌するための条件が整っており、さらに糖代謝や基礎体力向上、モチベーションUPにつながるなどメリットが多くあります。
【鍛えておきたい筋肉】
- 背中
- 肩
- 太もも
- お尻
テストステロン補充療法で増やす
テストステロンの減少によって不調が続いたり、男性更年期(障害)が疑われる際にはテストステロン補充療法も視野に入れておくと良いでしょう。
定期的にテストステロンを補充することで心身に起こるさまざまな症状を改善し、ふたたび若さや活力を取り戻すことができます。
クリニックや医療機関で受けることができ、1回あたりの相場は次のようになっています。
男性更年期障害である場合は保険が適用されます。
食事でテストステロンを維持・生成する
テストステロンの元を辿ると、その原料となっているのはコレステロールです。
つまり食事から栄養を摂取することが、テストステロンの生成・維持の手助けになります。
- タマネギ
⇨ 含まれる含流アミノ酸がテストステロンの生成を助ける - 亜鉛・マグネシウムを含む食材(牡蠣・牛肉・豚肉・鶏肉・ナッツなど)
⇨ 1日30mgの亜鉛とマグネシウム450mgを摂取によってテストステロン値の上昇が認められている - ビタミンKが豊富な食材(納豆・ブロッコリー・小松菜など)
⇨ ビタミンKが欠乏するとテストステロン値が低下することがわかっている
こうした食材を中心に、バランス良く栄養をとることを意識してみてください。
テストステロンのQ&A
ここからはテストステロンにまつわるQ&Aをご紹介していきます。
気になるものがあれば、今後の参考にしてみてください。
テストステロンの正常値は?
テストステロンの値は、血中の濃度で確認できます。
- 正常値:11.8pg/ml
- 要注意:11.8〜8.5pg/ml
- ホルモン補充療法の対象:8.5pg/ml以下
テストステロンを増やすとモテるって本当?
テストステロン値が高い人は、バイタリティに溢れています。
社会的に成功している人も多く、表情にも余裕があるため、女性には魅力的にうつります。
また、女性にも子孫繁栄が本能的にあるため、活き活きした男性に惹かれやすいとも言えるでしょう。
3週間マスタベーションを行わなければテストステロンが増えると聞きましたが…
3週間マスターベーションを断っても、テストステロンが増えることはありません。
むしろ射精時をピークに、テストステロンの値は大きく上昇することがわかっています。
そのため禁欲するのではなく、マスターベーションや性行為を定期的に行うことがおすすめです。
テストステロンを増やすとハゲますか?
薄毛になることはありません。
AGA(男性型脱毛症)の原因とされているのは、「DHT(ジヒドロテストステロン)」と呼ばれる男性ホルモンです。
記事の監修医の紹介
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記事の監修医窪田 徹矢(くぼたクリニック松戸五香 院長)
2003年、独協医科大学卒業。千葉医療センター、成田赤十字病院で研修。千葉西総合病院泌尿器科部長などを務め、17年に、くぼたクリニック松戸五香を開設。筋トレドクターとしてメディア出演も。日本泌尿器科学会専門医、指導医。
プロフィール:窪田 徹矢
公式HP:https://www.kubota-clinic.info/
くぼたクリニック松戸五香の情報掲載中
この記事を書いた人
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オンライン編集部:キム
自分がEDだったため、改善したい一心で3年間EDクリニックのカウンセラーとして勤務。クリニックで得た知識や改善方法を多くの男性に伝えるため、ライターに転職。 現在はクリニック体験記事も執筆しているので、ぜひご利用前にご覧ください!趣味は釣り、サウナ、ゲーム。